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この新興宗教がヤバい!10-FEET『ヒトリセカイ×ヒトリズム』

2017/2/1、10-FEETのNewシングル『ヒトリセカイ×ヒトリズム』がリリースされた。これがすごくヤバかった良かったので、今日はその話をしようと思う。

新興宗教10-FEET

まずはなにも考えず、『火とリズム』のPVを観て欲しい。

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10-FEET – 火とリズム - YouTube

なにこれ。

火を囲んで座禅を組む40過ぎのおじさん達。80年代〜90年代ごろの下手くそなバラエティで使われてたような馬鹿エフェクト。時折差し込まれるヤバめなパターンの背景。ビデオテープ時代の映像にありがちな黒い斑点。

さながら、90年代あちこちのメディアをお騒がせしたアブな目な宗教ビデオよ。こんなハイリスクなビジュアルでプロモーションして大丈夫か。

絶対これやばめなサブリミナル仕込まれてるだろ。なんか観たらすごい疲れるもん。10秒に1フレームだけとかで尊師的な画像仕込まれてるだろこれ。弁当屋さんでも始めんのか10-FEET。

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しかしこのPVで売る気あるのか。このビジュアルだとサビまでたどり着かなくて離脱した人もかなりの数いると思うので、あらかじめ強めに言っておきたい。我慢してこの壊れたビデオを2分近く観続けると、終盤で超かっこいいサビに辿り着けるぞ!

YouTubeのコメント観ると「独特なMVでかっこいい!」みたいなコメントちょいちょいあるんだけどお前らよく考え直せ。そんなわけあるか。クソだせえだろ。これをかっこいいって言われるのはテンフィ側も心外だろうし、逆にこれを礼賛したら「これ俺らイケるんちゃう…?」って音楽以外の非常にインモラルな稼ぎ方に走る可能性もあるからこういうのはファンの方で目一杯抗議活動しろ。

曲はすごくいい

この『火とリズム』、1回目のサビまで1:35ちょっとある。今の邦楽ロックの常識から考えるとやや遅め。しかもサビまでの展開が多い。開始1分以内でパパーンとテンポよくサビに行く曲に慣れた邦楽ロックの民には、正直受けにくい作りになってると思う。10-FEETぐらいキャリアのあるバンドじゃないと、こういう曲作りはリスクがあってなかなかできない。

しかし実際聴いてみると、不思議なぐらい退屈しない。初回のサビまでは展開多いのだけど、その後はすぐ2パターンのメロ挟んでまた立て続けにサビに入る。ベースをど真ん中に据えた間奏も耳馴染みが良くて、最後まで全く飽きない曲作り。

サビ前にピタッとブレイク入れて一気に弾けさせるライブ映えする進行とか、もはやテンフィの伝統芸能の域よ。超かっこいいので、是非どぎついビジュアルに耐えて2分間PV観て欲しい。

ヒトリセカイのWANIMA感、10-FEETのかっこよさ

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10-FEET – ヒトリセカイ - YouTube

こっちのPVは、『火とリズム』の馬鹿PVっぷりに比べて非常にロックバンドらしい仕上がり。段々画面の明度が上がっていって、傷だらけの10-FEETが浮かび上がってくる仕組み。これはギリギリLINEで友達に送っても許される。「傷だらけのおじさんNG」とかいう華奢目なサブカルクソ女以外には送れる。

で、肝心の曲だけど、これはもうむき出しのWANIMA路線。僕は大好き。どえらいキャッチーなメロディに短くて強めの口馴染み良い言葉を何回も何回も繰り返す構図。WANIMAさんこんにちはですよ。

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WANIMA- THANX(OFFICIAL VIDEO) - YouTube

「WANIMAがテンフィっぽいねん」という意見はごもっともなんだけど、あまりにWANIMAのお株を奪うというか、WANIMAの持ち味丸出しだったのでこれはむしろ逆にテンフィがWANIMA路線なのでは…?となった次第。あらためて言うけど、僕はこの曲もWANIMAも大好き。

それでWANIMAの話だけど、WANIMAがああして成功しているのは、ひとつ「若さ」ってのがあると思うんですよ。例えば、WANIMAの曲を年寄りがやっても絶対にウケないわけで。冷静に考えて、アルフィーの面々が『ともに』とか歌ってたら嫌でしょ。「なに『悩んだり泣いたりする今日も進め』とか言うてんねん。おっさん達の悩みって息子の反抗期とか更年期障害とかか?こっちはもっとナイーブでプリミティブな一人間の悩みやねん。」ってなるわけじゃん。

WANIMAが若くなかったら、WANIMAの歌は若者に刺さってなかったはず。それは端的に、WANIMAの若さがWANIMAの曲の説得力の一端を担ってたということ。

そこで翻って10-FEETの『ヒトリセカイ』、つくりはモロにWANIMA路線。でも、おっさんが歌ってるはずなのにやたら説得力ある。おっさんが歌ってるはずなのにやたらかっこいい。普通、若さがなきゃこういう曲はやれない。若くないと、どこかこういう曲には「嘘が含まれてる」ように見えるからだ。

じゃあなんで10-FEETがやるとこんなにかっこいいか。ヒトリセカイの歌詞を見てもらえれば、語るに落ちるというか。

10-FEET ヒトリセカイ 歌詞 - Google 検索

柄に似合わぬ繊細な比喩に、全部を言葉にしてしまわない慎重な言葉選び。この曲の説得力は、このワードセンスに拠ってる部分が大きいと思う。ちょっと言葉を選び間違えたら、ちょっと稚拙な比喩を使ったら、途端にこれを聴いた若者たちに「嘘」だと看破されてしまう。もちろんTAKUMAが嘘を書いてるとは思わないけど、若者の目にはそう映るリスクも大きい曲だと思う。それで、嘘に見えないばかりか説得力さえあるこの曲は、ひとえにTAKUMAの選んだ言葉がどこまでも正解だったからだと思うわけです。実はTAKUMA、めちゃくちゃ教養あるんじゃないかって思う。

40のおっさんがこういう曲をこんなにかっこよくやっちゃったら、若手はもはや戦えんじゃろこれ。ちょっと俺もおっさんというかおじいちゃんな言葉遣いになっちゃうけど、戦えんじゃろこれ。最高。

おわりに

10-FEETの新曲、個人的にすごく素晴らしい2曲だったなーと素朴に思う。きっとこれからも何度も聴くことになる。ちょっとPVは何度も観ると新しい宗教観に目覚めそうだからもう観ないけど。1回観ただけの今も「ブッダ 教え」でググって心を落ち着かせてる。

どちらの曲にも共通して思ったのは、10-FEETがこれだけキャリアを積んで今こういう曲をやれるのはすごく素晴らしいことだなー、ということ。YouTubeのコメントには「昔のテンフィっぽくて良い!」みたいなコメントがちょくちょくあったのだけど、僕は「今のテンフィだからこの曲をかっこよくやれるんじゃ」、と心のなかでそのコメント者をぶち殺してる。

ともあれ、去年リリースの『アンテナラスト』に引き続き、今回もすごくいい曲なので『ヒトリセカイ×ヒトリズム』、おすすめです。

<関連記事> 10-FEETのライブを生で観るべき4つの理由 WANIMA、なんで人間の心の一番きれいなところみたいな曲と下半身の曲しかねーんだよ

WANIMA、なんで人間の心の一番きれいなところみたいな曲と下半身の曲しかないんだよ

もうタイトルどおりです。

WANIMAの曲、0か100かみたいなところがある。

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人間の心の一番きれいな部分を歌ったような、メロディも言葉もめちゃくちゃクリーンな楽曲達。例えば、『1106』や『THANX』、『TRACE』、『ともに』らへんがそれにあたる。口ずさんでると、それだけで少しいい人間になれるような気がする"きれい"サイドの曲達。いわばWANIMAの「白い」部分を担う楽曲。

一方、WANIMAの「黒」担当。人間の本音オブ本音みたいな曲たち。もう下半身直撃。たとえば『BIG UP』とか『いいから』とかがそれにあたる。黒っていうか、なんか肉感ある赤黒さ。

WANIMAの曲、なんかこういう0か100かみたいな風潮がある。

なんでWANIMA、人間の心の一番きれいな部分みたいな曲と下半身一直線の曲しかないんだ。

"きれい"サイド

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WANIMA -TRACE (OFFICIAL VIDEO)

このMVどこで歌ってんだこれ。電源を引け。

「人は言う 目を覚ませ」そりゃ言うだろこんなとこで歌ってたら。こち亀の日暮でも言うよ。目を覚ませ。

しかしまあ曲のかっこいいこと。遊びの多い緩急に、一本筋のピシッと通ったKENTAのハイトーンボイスがめちゃくちゃ映える。メロコアの単調なはずの音作りの制約の中で、よくここまで飽きない展開の曲生み出せるなと思う。

本当に、WANIMAはメロコアを再発明してると思う。スカダンス一辺倒のメロコア部族の民たちに、リズムを取って歌を歌うという音楽本来の原始的な楽しみを知らしめたよ本当。

それで、歌詞がこんな具合だ。

WANIMA TRACE 歌詞

頭に焼きそばを乗っけた、いかがわしいアジア雑貨屋の店長みたいな見た目からは想像できないぐらい繊細な言葉選び。ただ母音だけあわせて韻を踏むんじゃなくて、ちゃんと文脈を抑えて言葉を選んでる。

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WANIMA- THANX(OFFICIAL VIDEO)

こちらは代表曲の『THANX』

WANIMA THANX 歌詞

過剰にキラキラした言葉が並んでいて、少し心の荒んだインターネットに住まう根暗たちには着色料が強すぎる内容。

でも、ライブみたいな非日常空間では、これぐらい過剰に装飾されたストレートな言葉のほうが口に出して歌ったときに気持ちよかったりする。

聞けば一発で覚えられるキャッチーなメロディとリズムに、大声で歌ったら絶対気持ちいい言葉達。ライブでの幸福感を最大限高めるように設計されたWANIMAの曲。

間違いなく、"きれい"サイドの楽曲は、WANIMAの看板。

下半身サイド

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WANIMA -BIG UP(OFFICIAL VIDEO)

WANIMAの下半身楽曲のPVって意外と少ない。多分この『BIG UP』ぐらい。WANIMAのメディア戦略担当がよっぽどずる賢いんだと思う。この曲は夏の鉄板曲。夏以外も確実にやるけども。

曲の中身はメロディも詞も実に下半身に正直で、非常に好感のもてる作りとなっております。

バンドでメシを食える奴らは全面的に女の子の性欲を煽ることを義務付けて欲しい。売れてるバンドってだけで普通の成人男性の2万倍ぐらい恵まれた股間事情を過ごしてるんだから。その点WANIMAは優秀。男女問わず、「あ、これ過ち犯していいやつじゃん」というムード丸出しできてくれる。

WANIMA BIG UP 歌詞

最高。

正直は美徳ですよ。どいつもこいつも、生ぬるい愛情表現を無理やりあの手この手でオブラートに包んで歌うけど、もうこれぐらいちんちん丸出しな方がいっそ清々しいわけよ。最初から全裸で歩いてるおっさんと、マント着てて女学生の前でだけ丸裸になるおっさん、どっちも同じ変質者だけど最初から全裸の方がなんか気持ちいい変態だったりするじゃん。潔すぎて逆に「なにか事情があって裸なのかな…?」みたいに、嫌味のない捉え方ができるというか。WANIMAはもう最初から全裸。オープンな変質者よ。

他にも『いいから』とか『1CHANCE』とか、出すCD全部に青少年の股間応援ソングが紛れ込んでくる。WANIMAは日本の股間代表バンドよ。これだけ潔く丸出しなら、おれたちの股間の気持ちを歌うことにも異論はないよ。

卓越した「歌」づくりのセンス

“きれい"サイドの曲も、下半身サイドの曲もどちらも共通しているのは、WANIMAの卓越した「歌づくり」のセンスに支えられているということ。

誰でも、1回聴いたら絶対に忘れないキャッチーど真ん中の、めちゃくちゃ華のあるメロディ。そこに、口ずさんで絶対に気持ちいい言葉選び。オノマトペ一つとっても、WANIMAの言葉選びは詞としておもしろい。ライブで聴かせて、歌わせて気持ち良いWANIMAの歌。

歌は本来、誰かが歌うのをただ聴くものじゃなくて、誰かれ構わず参加して歌えるのが原始的な楽しみ方だ。WANIMAは、「歌」の持つその原始的な魅力を、最大限引き出す曲作りができる。

そして、その気持ちよさを最大限高めるプレイング技術もある。MCの茶目っ気もある。WANIMAは、「みんなで歌う楽しいライブ」をいま一番楽しくやれる若手バンドでもある。

おわりに

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WANIMA-1106 (OFFICIAL VIDEO)

WANIMA、すごく良いバンドだと思う。数年に1組の、規格外のバンド。

広がるスピードで言えば、ELLEGARDENが出てきたときぐらいの急速な広まり方をしてる印象だし、それに対して違和感もない。シーンの雰囲気を変えちゃうぐらい、WANIMAのブレイクは邦楽ロックにとって重要なものになってる。

もちろん、ダンスロックが一通り行き渡ってそろそろ4つ打ちばっかりもどうなの?っていう疑問が芽生え始めてたところにカウンターカルチャーとして刺さった側面はあると思う。でも、WANIMAが一介の「ちょっと売れたバンド」にとどまらず、ここまで広く受け入れられたのは全面的に本人たちの力に拠ってるはずだ。

もう登れる山は一通り登ってしまったWANIMA。次は、自分たちが邦楽ロックに新しい景色を作り出す順番が来たんじゃないかと思う。WANIMAは、またもう一つ大きな嵐を見せてくれるんじゃないかと、僕は思う。

今IT業界で一番ヤバいバンド、ポルカドットスティングレイ

もうタイトル通りだけど、ポルカドットスティングレイは今IT業界で一番ヤバい。業界ナンバーワンです。

アプリエンジニア、ITディレクター、プログラマ(平匡さん)、インフラエンジニア(沼田さん)、みんな揃って聴いてる。IT業界の期待を一身に背負っている。

IT業界というと、とかくネガティブなイメージが先行しがち。根暗、オタク、メガネ、肥満、薄毛…世界中のコンプレックスの汁を煮詰めて出来上がった怨嗟の世界、それがIT業界。

スティーブ・ジョブズみたいなエリート起業家を志向して入った意識こじらせ学生が、10年後禿げ上がって「絶望した、世界を救えるのはキュアフローラちゃんだけ」とかぶつぶつ言うように教育される。ジョブズとの共通点は禿げだけ。「今年は飛躍の年!」とか「圧倒的スピードで成長する!」とか毎年いってるやつ、良かったな。圧倒的成長できるぞこの業界。

積年の恨みから少し話がそれた。

とかく行き場をなくした負のエネルギーが爆発の切っ掛けを待ってる、そんなIT業界にきら星のごとく現れた超新星、ポルカドットスティングレイ。

フロントマンでギターボーカルの零がまさかのスマホアプリディレクター。こんなに華やかなIT業界人がかつて居ただろうか。

IT業界はポルカドットスティングレイの圧倒的成長を期待して見守っています。表舞台で評価されるIT人、そんな夢をポルカに見ています。

どっこい、ググってみたら零の顔と身体の話ばっかり出てくる現状。やれテレキャスター・ストライプMVの零ちゃんのバニーかわいいだとか、零ちゃんに彼氏はいるのかだとか。

もうバンドをちんちんから考えるのはやめよう!僕たちIT業界人の希望の星にこれ以上余計な色をつけないで!

MVやツイキャスでのパフォーマンスから、少し下品めな話題が集まありがちなポルカドットスティングレイ。

普通に、かっこいいです。

今日はそんな、今IT業界で一番ヤバいバンド、ポルカドットスティングレイの話。

向上心の塊

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ポルカドットスティングレイ「エレクトリック・パブリック」MV

フロントマンの零(Gt,Vo)、上でも少し書いたけど現職で「スマホアプリのディレクター」をやりつつ、バンド活動をしているらしい。

さわって!ぐでたま」ってゲームのディレクターをしているとのこと。

普通にヒットアプリ。ヤバい。

だいたいこの手のヒットアプリ作ってるところって、ワーカホリック気味な社風だったりするんですよ。

過労自殺した電通の新入社員のニュースを見て自分の方が働いてんのに無自覚に「そんなに働いて可哀想に…」とか呟くハード馬ー鹿ーワーカーがごろごろいる。労働基準法の背表紙でケツを拭く社風だったり、会社の座敷童と化した不帰宅の妖精がいたりする。

そんな過剰労働あふれるITベンチャー界でエンジニアしながらバンドとか、向上心の塊よ。ただならぬ向上心。現代が生み出した、高まりすぎた意識の怪物よ。もはや。

ただ意識が高いだけじゃなくて、行動が伴ってるからすごい。事務所、レコード会社ともに無所属でセルフプロデュースでここまでバンドを大きくしている。

そもそものスタートからして、「あ、もう1個バンドやりたい!ツイッターでメンバー募集したれ!」で始まってるし、Webネイティブ世代特有の、いい意味で向こう見ずな行動力がある。行動を起こせば、人が集まってきてなんだか色んなやりたいことができるようになることを肌で知ってる。どんな業界でも成功する資質です。

戦略もある

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ポルカドットスティングレイ「テレキャスター・ストライプ」MV

サビのギターリフが超好き。零のめちゃくちゃ口馴染みのいい「嗚呼ヽテレキャスターストライプ」ってキラーフレーズを、一番気持ちよく聴こえる形で演出してる。サビのフェードイン・フェードアウトもすごく自然に聴こえるし、サビが何万回も頭に勝手に流れてくるように仕掛けてるのはこのリフの仕事が大きいと思う。

このMVも、Web時代の音楽の広がり方をあらかじめ研究した上で作られてる。

EMTG:今、ポルカの名前は知れ渡っている真っ最中ですが、きっかけはMV「テレキャスター・ストライプ」(再生回数170万回以上/11月時点)ですよね? 雫:そうですね。今はネットの力が絶大ですからね。それで人に見てもらえる工夫をしようと。映像が面白くて、最後まで曲も全部聴いてしまうという感じにしたくて。で、自分たちでタダでできるプロモーションを頑張ろうと。 (引用元:http://music.emtg.jp/special/20161108613ad8eda)

まんまとMV最後まで観ますよね。

曲のかっこよさは言わずもがな、視覚的にも展開が気になるつくり。MVを最後まで観させるのって、単純なようで結構大変。

例えばYouTubeアプリなんか、ずっと画面下半分に「関連動画」とか言って、似たようなバンドの曲がばっちり表示され続けてるわけで。別の動画に移動せず、同じMVを4分間観続けるのって、視聴者の側からも大変。最後までMV観れないバンドのなんと多いことかと。

それを認識した上で、MVを「最後まで観られる」ように作れるのって、よほどしっかりマーケティングしてないとできないよなあと。再生数の多いMVとかひたすら観て研究してたりしたらしい。

そういうWeb戦略をしっかり持ったバンドはやっぱり強いと素直に思う。IT業界の星だけある。手作り感あふれる公式サイトとか本当愛らしい。

ヤバTなんかもそうだけど、Webをうまく使うことはこれからのバンドに必須のスキルセットになってくる。そもそも、Webがおもしろくないとメジャーレーベルにも見つけてもらえない時代になってきてるわけだし。

おわりに

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ポルカドットスティングレイ「人魚」MV

そんなわけで、ポルカドットスティングレイ、IT業界を飛び出て全方位におすすめできるバンドです。

バズリズムでも紹介されたし、メディアの興味を惹く経歴も十分。2017年は更なる飛躍の年になると思う。

なまじPVのインパクトが強かったり、狙い過ぎな演出からして「どうせボーカルがかわいいだけのバンドだろ」って意見が出ちゃったりするのも仕方ない部分はあると思う。

ところがどっこい、実際はボーカルがかわいいだけじゃなくて才能も向上心も戦略も行動力もあるバンドなんです。ただちょっと可愛くて歌が唄えるだけの女の子を真ん中に置いただけの、オタサーの姫バンドじゃないんです。

ポルカドットスティングレイ、今年は色んなフェスや対バンで見かけることになると思う。これからきっと、僕たちをもっとわくわくさせてくれるはず。

関連記事: 売れないバンドマンは今すぐSEになれ

お茶の間に届け!打首獄門同好会!

打首獄門同好会を知っていますか?

いかつい字面、男1・女2の構成からして、なんらかの高度に体育会系な性技を愛好するSM集団かなにかと思ってUターンした人も少なくないと思います。僕もその口だ。「なんでYouTubeにこんなものがあるんだ、XVIDEOSかYouPornに上げなおせ。異常性癖は日陰に戻れ」そう文句を垂れてブラウザをそっと閉じた思い出がある。

そうして、ファーストコンタクトで打首から首を背けてしまった皆さん、もったいないです。

打首獄門同好会、今の日本では珍しく、老若男女全方位におすすめできる、非常にモラルあふれる健康的なバンドです。

XVIDEOSでやってろとか言ってすみません。いっそYouTubeといわず、もうNHKでも扱ってほしい。

届けお茶の間!震えろ床の間!僕は、打首獄門同好会にお茶の間を席巻してほしい。

生活密着型ラウドロック

打首獄門同好会、「生活密着型ラウドロック」を標榜して活動しています。

「生活密着型ラウドロック」ってまずなんだいと。「生活とラウドロック」は「木村と香取」ぐらい相容れない言葉のはず。…と、僕も思っていたけど、例えば↓のような曲を聴いて一発で理解しました。

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打首獄門同好会「私を二郎に連れてって」

やたらとリアルな二郎への憧憬をクソうるせえボリュームで歌った歌。重たいサウンド、ふざけた歌詞からやたらキャッチーな歌メロ。

二郎に行く人じゃないとこの曲の「日常感」はあんまり分からないかもしれない。けど、僕にはこれが一番ピンときた。

店の行列を遠巻きに見つめるところから始まり、カラフルなカードが並ぶ券売機で食券を買い、店内でどうコールすればいいか迷って…みたいな、二郎に初めて行く人が一人残らず通る道を完璧に網羅してくれている。二郎行ったことのある人は「わかるー!」と唸る出来だと思います。歌の完成度とか無視で、二郎あるあるとしてそもそも優れてません?

間違いなく、「二郎に行く人」のめちゃくちゃ具体的な「生活に密着した」内容の歌。ああなるほど、これが生活密着型ラウドロックかい、と。

万人の生活に密着してる

打首、なにもジロリアンあるあるだけ歌ってるわけじゃない。ちゃんと万人の生活に密着してラウドロックしてくれています。

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打首獄門同好会「フローネル」

風呂入って速攻寝たい、二度寝最高。そんな万人に普遍的な快楽を歌った歌。例えば性癖なんて、1万人いたらそれこそ1万通りある気がするけど、「風呂入って速攻寝る」ことの気持ちよさはもう全員知ってる同じ快楽。二度寝最高とか、多分人類が5万年ぐらい前から知ってる不変の快楽ですよ。

他にも、

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打首獄門同好会「日本の米は世界一」

常軌を逸した米への愛を歌った歌。

日本人の米愛は常軌を逸している。そんな米異常性愛者、日本人みんなのための米応援ソングだ。

ある日、お母さんの晩御飯を「美味しい美味しい」と食べている時に「あれ?これ…もしかして母ちゃんの料理が美味しいんじゃなくて米が美味いんじゃない…?」って禁断の疑問を持ったことがある人、少なくないと思う。

母ちゃんにバレたら尻の毛までむしり取られる、墓場まで持っていこうと心の奥底にしまいこんだ不謹慎な疑問。でも、日本人のDNAからして、その疑問は仕方ない。そう、米が美味いんだ。米が美味いから食事が幸せなんだ。

そんな、日本人なら誰でも腹の底に抱えた米最強論を高らかに歌った歌。

打首獄門同好会は、万人の生活に密着してくれている。

こういう万人におすすめできるネタを、やたら重厚なサウンドとキャッチーな歌メロに載せて届けてくれる。生活密着型ラウドロックの本懐と思う。

ライブエンターテイナー

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打首獄門同好会「カモン諭吉」LIVE(2014.10.18@赤坂BLITZ)

打ち首というと、うまい棒が飛び交ったりみんなで諭吉を呼び出したり、ライブでのパフォーマンスがめちゃくそエンターテイナーなことも忘れちゃいけない。

僕も直近のライブ、COUNTDOWN JAPAN 2016/2017で彼らを観たけど、圧巻のパフォーマンスだった。

キャパ8000人ぐらい(らしい)ASTRO ARENAを見事に埋めきって、堂々たるステージ。大澤会長(Gt,Vo)は「なんでイエモン行かないの?俺は観たいけど」って言ってたけど、なんだかんだ会場びっしり埋めてて底力を感じた。

アストロアリーナって座れる席があって、例年年越し直後の時間帯は休憩がてら座ってライブ観たい人が休みにくるんだけど、そこに打首。もう休ませない。普通に刑。打首じゃないけどなんらかの刑。

でも、そんな休みにきた人たちすら、最終的には踊らせたりコールアンドレスポンスさせたりするから打首はすごい。最後のフローネル前のMCで、「正月どう過ごす?大体わかる、寝正月だ」って言ってたけどおっしゃる通り寝正月になりました。予知もできちゃう。打首すごい。

おわりに

いかがでしょうか、打首獄門同好会。

日本全土のお茶の間に広く浸透して欲しい。NHKで、あるいは学研の教材ビデオで。広くお茶の間で聴かれ、歌われて欲しいバンドです。

ここ1〜2年でメディア露出も増えてきてるけど、名前がいかつ過ぎてメディアにNG食らったりしてるの本当におもしろい惜しい。なんなら、「打首を紹介したい!」って業界人もTV局とか雑誌の人から「あ、そのバンド名はちょっと…」ってNG食らったりとかあるらしい。本当おもしろい惜しい。

たしかに、名前がいかつかったり、ラウドロックがそもそも大衆にウケないって話はある。でも、打首は「誰でも分かって笑えるふざけた曲」なのに、音はバリバリにラウドロックっていう違和感がおもしろさになってる。ラウドだからウケないんじゃなくて、打首はラウドだからおもしろい。

誰でも笑えて楽しくて、音楽的にもかっこいい。こんなバンドがお茶の間に届かないの、もったいなくない?打首には広くお茶の間のみなさんのものになって欲しい。打首獄門同好会がお茶の間を席巻する日がはやく来て欲しい。

だって、みんなデリシャスティック大好きでしょ?

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打首獄門同好会「デリシャスティック」LIVE(2014.10.18@赤坂BLITZ)

日本一アツい名古屋出身バンド、04 Limited Sazabysを聴け

10年弱の間、完全に過去のジャンルと化してしまっていたメロコアを華麗に蘇らせた04 Limited Sazabys。

メロコアというと、どんなバンドを思い浮かべるでしょうか。先駆者にしてジャンル完成者のHi-STANDARD、精神的な後継者10-FEET、TOTALFAT…等々。よく言えば漢らしい、悪く言えば汗臭いバンド達が思い浮かぶと思います。

そこにハンカチとエイトフォーを持って現れ、汗業界に革命を起こしたバンド、04 Limited Sazabys。メロコアというジャンルへのイメージを一変させ、ディッキ族以外の人間にも手広く届けてみせた、メロコア界の救世主。

ものすごい勢いで売れたものだから、とかく反感を買いがちなフォーリミ。なんとなくイメージだけ先行して聴いてない人も多いと思うんです。今日はそんなフォーリミが売れるべくして売れ、決してそれが偶然ではなかったという話をしようと思います。それで、願わくはフォーリミをちゃんと聴いてもらえれば。

いま日本で一番アツい名古屋出身バンド04 Limited Sazabys、おすすめです。

メロコアの国、名古屋

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Hi-STANDARD - Stay Gold [OFFICIAL MUSIC VIDEO]

名古屋って、メロコアバンドがやたら多いんです。理由はよくわからないけど、なぜかやたら熱心なメロコアファンとメロコアバンドが多い。

メロコアみたいな、掘られ尽くした炭鉱のようなジャンルを「まだ石炭あるし」といって掘り続けてる名古屋人たち。スプーンで脱獄する囚人みたいなストイックさですよ。僕、隣県出身ですが、毎週末は名古屋の方向から『STAY GOLD』の合唱が聴こえてくる。いい加減目を覚まして西野カナとか聴けよと思う。

フォーリミは、そんなメロコア大国で並みいる古豪を押しのけて上り詰め、メロコアで東京に殴り込みをかけてきたバンドになります。

では、フォーリミはどうしてそんなメロコア大国名古屋でトップに上り詰めることができたか。

メロコアの命、メロディセンス

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04 Limited Sazabys『swim』(Official Music Video)

04 Limited Sazabysの成功の最も重要な要因は、GENのつくる圧倒的にキャッチーに振り切れたメロディセンスにあると思うんです。

日本中のバンドマンが頭をひねっても作れないメロディを、こともなげに発明できるのがフォーリミの最強の武器。サビでもないのにこんなフレーズ投入すんじゃねえって全国のバンドマンがブチ切れている。

メロコアは、差別化できる部分が非常に少ないジャンルなんです。ハイスタで始まり、ハイスタで完成された故に、そこで出来上がってしまったルールをいかに工夫して魅せるかにメロコアバンド達の苦労はありまして。

他との差別化が難しいメロコアというジャンルで音楽をやる以上、良い歌メロをつくれるかどうか、というのはそのバンドの生命線になるんですね。ハイスタの『STAY GOLD』みたいに、一度聴けば全員一発で歌えるようになる尖ったメロディを発明できるか。これはあらゆるメロコアバンドに普遍的なテーマ。

良い顔面や特徴的な声のボーカルといった飛び道具を持っていないバンドは特に、ここのメロディセンスがバンドの分水嶺になる傾向にあります。

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04 Limited Sazabys 『monolith』(Official Music Video)

まさしくキラーチューン。

こんな聴いてて気持ちいメロディ発明できるバンド、そうそう現れないですよね。フォーリミは、飛び道具もメロディセンスも、どっちもずば抜けた個性を持っている。そりゃメロコア大国でもトップ取るはずと。

メロコアバンドらしくないルックス

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ご存知の通り、フォーリミはこれまでのメロコアバンドの常識を覆す見た目をしている。

メロコアバンドというと、ステージ上での正装はタンクトップか破れたTシャツ、上品な人でも襟つきのシャツは着ない。ギターの玄は切らないでびゃんびゃん。そんなビジュアルが先行しがちなジャンルなわけです。

そこにフォーリミは、小洒落た服・髪、線の細いキャラクターで現れました。ぱっと見、MCで「ぼくは今日も地球とこの風に感謝したい」とか言いそうなタイプの線の細さ。大きい声を出せないタイプの見た目。

この見た目が、これまでメロコアバンドたちがリーチできなかった層を取り込む取っ掛かりになった。一部のファンによる小さなマーケットで完結していたメロコア界に、新しい客を呼び込むことに成功した。しかもこの見た目で言うことが普通にロックミュージシャンのそれで、そのギャップにまた年端もいかぬ乙女たちはときめいちゃってる。年端も随分いったおじさんもときめいちゃっている。おお? 誰がおじさんじゃい! ワンカップ持って公園来いオラ!

ともかく、多くの邦楽ロックファンにとって親しみやすい見た目で、しかも鳴らしている音楽は死ぬほどキャッチーに振り切れたメロディ。フォーリミが名古屋でトップをとって日本全土に飛び出していくのは、時間の問題だったわけです。

レペゼン名古屋から日本代表へ

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04 Limited Sazabys「Horizon」(Official Music Video)

「レペゼン」って言葉を聴いたことがあるでしょうか。

よくラッパーとかがつかう言葉で、「〜を代表する」という意味で使われる。「レペゼン名古屋」で「名古屋を代表する」という意味になる。「Represent」の略らしい。特に自分の地元に敬意を表して使います。

フォーリミ、まさしくレペゼン名古屋なバンドなんです。

東京に出てきてもうしばらく経ってるのに、今もライブの冒頭挨拶では「名古屋のバンド、04 Limited Sazabysです」と挨拶をする。

東京に出てくるとき、ギターのRYUTAが名古屋を出ることに対して難色を示して、GENが説得したらしい。

RYU-TA(G, Cho) うん。フォーリミは名古屋のバンドだって思ってたから。「名古屋の04 Limited Sazabys」って言ってるんだから、名古屋を守っていかなくちゃと。 KOUHEI そのときGENが「“日本のバンド”にならない限り、名古屋は守れないんじゃないの?」って言って。 GEN 「名古屋のために名古屋を背負って東京で戦うべきじゃないか」って言ったんです。 (引用元:http://natalie.mu/music/pp/04limitedsazabys05)

スケールでかすぎませんか。こちとら引っ越す時に「八王子のために、八王子を背負って23区で戦うべき」とか考えたことないけど…。

ともあれ、フォーリミは名古屋時代に収めた一定の成功をもって、自分たちはそろそろ「日本」というスケールで戦うべきだと判断して東京に出てきた。名古屋を制覇し、日本制覇に名乗りを上げる。織田信長かよ。

メロコア大国の名古屋で、メロコアでトップをとって全国的にメロコアブームの火付けをした。実際に織田信長みたいな経歴だけど、彼らはここからまだまだハネる底力を秘めてるはず。

おわりに

売れ方がえげつないこともあり、アンチからは「顔がいいだけ」と無遠慮な批判を受けがちなフォーリミ。

確かに顔はいい。事務所の戦略として顔をPRしてないというと、それも嘘になるでしょう。でも、バンドの知名度をあげる上でそういう売り方が一時的にあるのは全く悪いことじゃない。それも立派な戦略。

結局、「顔がいいだけ」かどうかは、時間が証明することになる。「顔がいいだけ」のバンドは、長いスパンでの消費者の評価に耐えられない。一時的なブレイクの後、早晩退場することになる。SMAPが顔だけで20年以上も国民的アイドルで居られたか?という話と同じです。

フォーリミ、そろそろ普通の一発屋バンドだったらとうに過渡期を迎えてておかしくない時期のはずなんですよね。僕の目からは、人気が衰えるどころかずーーっと加熱しっぱなしに見える。

「顔がいいだけ」かどうかは、歴史が証明する。僕だったら、断然04 Limited Sazabysが残る方に賭ける。

ヤバTの『流行りのバンドのボーカルの男みんな声高い』は本当か検証してみた

メジャー1stアルバム『We love Tank-top』が初週売上1.2万枚、オリコン初登場7位と、破竹の勢いを見せる、みんな大好きヤバT。僕も買った。見事に買った。名盤でした。

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そんなヤバTの新アルバム『We love Tank-top』に『流行りのバンドのボーカルの男みんな声高い』という名曲がある。

もうタイトル通りの出オチの曲なんですが、大サビの「4万円のレスポールとー」がめちゃくちゃエモい。色んなものごとをあきらめたおっさんの心に滲み入る名曲。

ただの売れてるバンド僻みで終わらせずに自分たちの物語にするあたり、ファン心理をよく分かってる。

そんなわけで、今日の本題。『流行りのバンドのボーカルの男みんな声高い』は本当なのか。

今日は、そんなみんなの素朴な疑問に答えるべく実例をもって検証してみたい。

クリープハイプ

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クリープハイプ 「二十九、三十」MUSIC VIDEO

流行りのバンドのボーカルの男声高い代表、クリープハイプ。今更感あふれるけど、まずは真っ先に思いつくバンドだろう。

たしかに声は高いけど、尾崎世界観の声がネックとなって嫌厭されてしまうケースも多い。本人も嫌いな声だと言ってる。

とはいえ、逆にこの声のファンという声も多い。尾崎世界観の描く登場人物たちの切実さを表現するには、逆に余裕の無いぐらいギリギリの声がハマってるように思う。激烈に上手い演奏とあいまって、クリープハイプの音楽は、ちょっと声が高いだけのバンドではとてもついていけないスピードでニセモノたちをぶっちぎっている。

間違いなく、今の邦楽ロック界の中性的なボーカルが爆発的に増える直接的な要因となったバンド。

関連記事:クリープハイプをメンヘラのためのバンドって言うやつはにわか

WANIMA

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WANIMA -ともに Full ver.(OFFICIAL VIDEO)

こちらも邦楽ロックシーンど真ん中で大暴れしているメロコア代表WANIMA。声たっかい。でも多分ヤバTの歌で想定されてるタイプじゃない声の高さ。

売れ方も売れる速度も常軌を逸した経歴。いつのまにか現れて天下獲ってたWANIMA。ハイトーンボイスにハイテンションで、色んなものが普通より高め。低空飛行の陰キャラに手厳しい味わい。

曲は、「どストレートに人間の心のきれいな部分に訴えかける曲」と、「下半身直撃のゲス曲」の2パターンに別れる。ついさっきまで股間にまつわる曲歌ってた同じ口でエモめな曲歌ってJK達を泣かしたりしている。JKの感情の振り幅大きすぎねえかな。泣きながら性欲を爆発させるな。どっちかにしろ。できれば後者にしろ。

WANIMA、ヤバTのターゲットになった「声高いボーカル」像とは多分ちょっと違うけど、今間違いなく流行ってる声高いボーカルのバンド。

関連記事:WANIMA、なんで人間の心の一番きれいなところみたいな曲と下半身の曲しかねーんだよ

サカナクション

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サカナクション / 新宝島

ダンスミュージックで邦楽ロックに一大ムーブメントを確立した偉大なバンド、サカナクション。最近は映画音楽の監修とかパリコレの音響とかやってるらしい。

曲調からはそこまで高くも無さそうに聴こえるが、カラオケでイキってお洒落アッピールをかまそうとするサブカルきのこを軒並み返り討ちにする山口一郎の声の高さ。

多数のフォロワーを生み出したものの、サカナクションの圧倒的音楽的教養の前にみんな心打ち砕かれてしまった。長らくずっとシーンのトップにいるのに少しもスピードを緩めないで進化し続けている。出すシングルが毎回年度を代表するようなキラーチューンに仕上げてくる怪物バンド。

関連記事:サカナクションのライブがすごすぎる5つの理由

[Alexandros]

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[Alexandros] - ワタリドリ (MV)

おしゃれなコードを使って洋楽みたいに歌いたい代表、[Alexandros]。

はやくグラストンベリーのヘッドライナー飾って世界の度肝を抜いて欲しい。最近は海外での知名度も上がってきて、『SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)』っていうアメリカのべらぼうに大規模な音楽フェスにも出演している。10日で20万人とか来場する「AMERICAAAAAAYEAHHHH!!」って感じ丸出しのフェスだ。

流行りのバンド、と一口には言うもののそんじょそこらの流行りのスケールを大きく外れて羽ばたこうとしている[Alexandros]。これからのさらなる飛躍に要注目。

KANA-BOON

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KANA-BOON 『なんでもねだり』

四つ打ちスチャスチャ踊れるミュージック、キャッチーなメロディで心掴むぜ代表、KANA-BOON。

多くの楽曲に特徴的なドラムパターンで2012年ごろからの邦楽ロックシーンの気分を一気に決めてしまったバンド。彼らの台頭から、猫も杓子もみんなこぞって四つ打ちの曲を発表し始めた。フェスや対バンで他のバンドの客を持っていける彼らの踊れるキャッチーな音楽は、どこもかしこもフェスだらけな今のシーンにカチッとハマった。

最近でこそ競合としのぎを削り合ってる印象だけど、まだまだもうしばらくシーンの中心で音楽を鳴らし続けるはずだ。

フレデリック

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フレデリック「オドループ」Music Video | Frederic “oddloop”

KANA-BOONから更に「四つ打ちスチャスチャ踊れるミュージック、キャッチーなメロディで心掴むぜ」に振り切った過激派バンド、フレデリック。

2015年〜2016年は間違いなくフレデリックの年だった。異常に中毒性の高いループ曲で邦楽ロックファンの脳みそを完全に破壊し尽した。

2017年も同じ勢いのまま、更にもうひとつ壁を突き抜けるか注目して見守りたい。

関連記事:フレデリックの『リリリピート』は脳をとろとろにすああああああ

sumika

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sumika / ふっかつのじゅもん【Music Video】

こちらも新進気鋭、「四つ打ちスチャスチャ踊れるミュージック、キャッチーなメロディで心掴むぜ」バンド若手代表sumika。

恐るべきキャッチーさのメロディで女心を鷲掴みにしている。あまりの鷲掴みぶりにちょっとしたわいせつ罪を適用されてもおかしくない。それぐらい彼らのつくるメロディはあまりにキャッチーで、心躍るメロディだ。

2016年の快進撃もすさまじかったsumikaだけど、2017年は一気に飛躍を迎える年になるだろう。

関連記事:ぼくたちはsumikaが売れるのを黙って見ることしかできない

おわりに

流行りのバンドのボーカルの男、みんな声高かった。

軽い気持ちで検証してみたら、邦楽ロックの全方位網羅しちゃう実例が出てきてしまった。他にももっとたくさん書きたいバンドあったんだけど、本当にどのジャンルも流行りのバンドのボーカルの男みんな声高い。

ヤバTの僻みもごもっともな結果。でも、今は彼らも僻まれる側のバンドに成り上がってしまった。全力アホ推しのプレイスタイルからやたらやっかみを貰いがちなヤバTだけど、メジャーデビュー前からここまで戦略持ってバンドやれてる人たちってそうそういない。

多分これからも「流行りのバンドのボーカルの男みんな声高い」傾向は続くはずだけど、そんな向かい風にもめげずに邦楽ロックの中心に一気に上り詰めて欲しい。

おもしろ日本史歌うたいおじさんレキシの魅力

レキシ。

音源もめちゃくちゃ売れてれば、ライブの動員もすごい。気づいたらいつのまにかポップミュージックのど真ん中にいた、おもしろ日本史歌うたいおじさん。

ここまで来ると、もう大体誰でも名前ぐらいは知ってるし、曲もちょっと小耳に挟んだことぐらいはあると思います。

「あ〜、なんか歴史の歌うたってる人ね!」 「なんかアフロの人!」

どっちも合ってる。けど、ここで引き返すのはもったいない。

レキシ、超おもしろいので、今日はそんなレキシのおもしろさを振り返ろうと思います。

本題に入る前に一応レキシの紹介です。

レキシは、日本のミュージシャン、池田貴史(いけだ たかふみ、1974年2月15日 - )によるソロユニットかつ、ユニット内における池田自身の名称。 同郷で同級生であった竹内朋康、永積タカシらに誘われ、1997年にSUPER BUTTER DOGのキーボード担当としてメジャーデビュー。デビュー当時からアフロヘアーがトレードマーク。忌野清志郎や椎名林檎などの楽曲提供、ライブサポートなどの活動も行っている。

(引用元:Wikipedia)

レキシって?

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狩りから稲作へ / レキシ

唐突ですが、電車とかで稲穂を持った人にでくわしたことはありませんか? しかも若い女の子が。

精米済みの米が出回るようになってはや数十年。はて、どうしてあのうら若き乙女は稲穂を持っているのだろう。呪術的なモチーフ?なんかそういうサブカル流行ってるの?そんな疑問を持ったことはありませんか?

それ、実はレキシのライブグッズです。

そういうサブカルが流行ってます。呪術的なモチーフではないです。

レキシのライブではみんな稲穂を振る。そういう信仰があるんです。

掛け声は「いな、ほ〜」で振る。文字で書いてもほんと意味わかんないですね。

電車で老夫婦がレキシのライブ帰りと思われる女の子集団を見て「稲穂を持った子達がいるわ。田植え体験の帰りとかかしら?若いのに立派ねぇ」みたいなことを言ってたんですが心が痛い。ただのジョークグッズなんですすみません。食育とかじゃなくてただのおもしろおじさんの追っかけです。

若い女の子だろうとなんだろうと恥を恐れず稲穂を持って電車に乗る。レキシのおもしろさは、良くも悪くも、そういった部分に集約されていると思うんです。

日本史モチーフの曲

レキシといえば、日本史モチーフの楽曲群。

めちゃくちゃポップでキャッチーなメロディに、超豪華なバックバンド。本気のポップスを日本史で台無しにした楽曲たち。それがレキシの本懐。

池ちゃんの類まれなメロディセンスと、圧倒的な日本史の教養、そしておちゃめ心があって初めて成せる業。

でも例えば、めちゃくちゃかっこいい曲に日本史リリックをぶち込めば「レキシの曲」になるかと言ったらそうはならないんですよね。KANA-BOONだって平家物語の曲あるけど別にレキシじゃない。

このPVを見て欲しい。

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レキシ - 年貢 for you feat. 旗本ひろし、足軽先生

ブラックミュージックなサウンドにめちゃくちゃポップで繊細なメロディ。そこに乗っかる農民。

音だけ見れば誰もが、おしゃれな喫茶店でかかってそうだなー、と聴こえる。そこに、日本人が皆なんとなく「ダサさ」を共有している「農民」をモチーフとして選ぶ。この落差がレキシの"おもしろさ"につながっているんですね。

同じ日本史モチーフでも、かっこいい曲に仕上げることはできたと思うんです。でも、そこを全力でおもしろい方向に振り切れるセンス。このメロディを使ってスベらないのは、相当なバランス感覚が必要ですよね。そのセンスが、レキシのおもしろさを支えている。

しかしやつい楽しそうだなこのPV。

無駄に豪華なサポート

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レキシ / きらきら武士 feat. Deyonna

レキシの作品には、色んな有名アーティストが参加しています。

  • ハナレグミ
  • 椎名林檎
  • 秦基博
  • いとうせいこう
  • 斉藤和義
  • 後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)
  • 持田香織(ELT)
  • チャットモンチー
  • Salyu
  • 山口隆(サンボマスター)
  • 安藤裕子
  • 上原ひろみ
  • スネオヘアー
  • キュウソネコカミ
  • 松たか子

適当に挙げただけでもこんな面子がいまして。

これらのコラボアーティストにはそれぞれ「レキシネーム」という池ちゃんの悪ふざけによるあだ名が与えられ、その名前でクレジットされている。

曲の方でも、参加アーティストの曲を志向したものが多い。たとえばアジカンのゴッチが参加した『やぶさめの馬』とかを聴いてみて欲しい。「あ、アジカン〜〜」ってなると思います。

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レキシ - 「KMTR645 feat. ネコカミノカマタリ」 Music Video+メイキング

同じアルバムから『KMTR645』これもまさしくキュウソネコカミ。まあ本人たちが演奏してるので当然ですが…。

こんなに豪華な面子でめちゃくちゃかっこいい音だけど、どこかダサい曲。そして聴いたことあるような曲。世界観のすべてでおもしろい。それがレキシの魅力。

超楽しいライブ

レキシのライブ、超楽しいんです。

例えばいい曲を持ってればライブって楽しくなるかというと、そうはいかないのが音楽業界の常。

  • 突き抜けた演奏の格好良さ
  • 盛り上げの上手さ
  • MCのおもしろさ

色々な要素が噛み合って初めて、ライブのエンターテイメントは完成する。何か一つしか武器のないアーティストは早晩ライブシーンからの退場を余儀なくされる。

安心してください。レキシのライブ、全部あります。

豪華なサポートメンバーがつくる重厚なアンサンブル、誰でも踊れる鉄板曲、めちゃくちゃおもしろいMC。レキシのライブは、ライブの楽しいが全て詰まっている。

で、池ちゃんがやたら喋る。好き放題やる。そのせいでもはや曲数はあんまりやれない。2016のSLSでは3曲しかやりませんでした。

「あんまり曲やらないの?それはちょっと…」 と思うなかれ。

会場を乗せすぎて尺が伸びに伸び、時間がいつも足りなくなるのがレキシのライブ。たくさん曲数やってる方がむしろ不安、ぐらいがレキシの正しい接し方。

まとめ

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レキシ、とにかくおもしろので聴いてみてほしい。というか、ライブに行ってみてもらいたいです。

フェスでもだいたい一番でかいステージでやってるので、遠巻きに眺めてみてもらえれば、そのおもしろさがわかると思います。まずは、おもしろ日本史歌うたいおじさん、ぐらいでの認識で見てもらえれば十分楽しめるはず。

なんだか超楽しそうに稲穂がぶんぶん振られる異常な光景。それを目の当たりにして、是非つぎは自分も稲穂を振る側になってもらえればと思う。

クリープハイプ尾崎世界観の『祐介』を読んだので、紹介・レビュー

アメトークでも紹介されたので、クリープハイプ尾崎世界観の『祐介』を読んでみた。せっかく読んだので、紹介とかレビューとかをしようと思う。

最初に結論からいうと、めちゃくちゃおもしろいので是非読んで欲しい。

まずは簡単な『祐介』の紹介から。

あらすじ

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以下、単行本の帯から引用。

スーパーでアルバイトをしながら、いつかのスポットライトを夢見る売れないバンドマン。ライブをしても客は数名、メンバーの結束もバラバラ。恋をした相手はピンサロ嬢。どうでもいいセックスや些細な暴力。逆走の果てにみつけた物は……。 「尾崎祐介」が「尾崎世界観」になるまで。たったひとりのあなたを救う物語。

『祐介』のボリューム

この小説、大体どれぐらいのボリュームがあるか試算してみた。

・ページ数 総ページ数 →141P

・1ページあたり文字数 39字×16行=1P最大624字 改行・空白等を考慮すると、 →1P:500字程度

・総文字数 141P×500字=70,500字 →約70,000字

人は大体1分で平均400〜600文字ぐらい読めるらしいので、目安としては2〜3時間程度で読める。

どんな小説?

売れないバンドマンが苦労しながらもスターダムを駆け上がる夢を目指すドタバタコメディ…ではない。

売れないバンドマンという部分だけはあってる。

スーパーでバイトをしながら出会った客や、ライブハウスで対バンをしたバンドマンや、バンド仲間と行った先のピンサロ嬢。そんな登場人物たちとの間に起きた些細な暴力やセックスや揉め事。卑屈な主人公の祐介が、それらの出来事を冷めた目で観察・分析する独白。

この小説に有名人ブログの書籍化ぐらいのものを期待して読むと、大いに期待を裏切られることになる。尾崎世界観のユーモアあふれる小話を期待して開いたフェスの民たちの心折れる姿が目に浮かぶ。

でも僕にとっては、いい方向に期待が裏切られた。自伝小説やドキュメンタリーを読むつもりで開いたら、文学だったから。

文学そのもの

尾崎世界観の『祐介』、ただ小説なだけじゃなくて、文学でした。

会話文中心に物語が進むポップな小説じゃない。ほぼ主人公の独白。描写が中心の構成。

東野圭吾とか辻村深月みたいなポップな小説ではなく、国語の教科書にあったような小説たちを思い浮かべて欲しい。どちらかというと教科書寄りの堅めの小説。

もちろん形式も文学というジャンルに近いけど、内容としてもとっても文学。

エログロナンセンスを取り揃えた、近現代文学のど真ん中を行くモチーフ。そして、最近の現代文学トレンドとしての、非正規雇用・貧しい若者による冷徹な自己批評。貧しくて悲惨な状況へのただの諦めではなく、それでも救いを見出す孤独で絶望的な葛藤。

そんな、現代文学の王道に真正面から挑んだ、出版業界から見ても真っ当な文学作品に仕上がっております。

鋭い観察力・比喩

尾崎世界観の書く文章は、比喩の切り口もするどい。優れた観察力や比喩は、優れた小説家の第一条件。

僕がすごく気に入った表現を試しに二点引用する。

まずは、祐介が恋するピンサロ嬢が、自分の地元に大好きなバンドがライブをしにきたときの思い出を話す場面。

「青森の田舎町で育ったんだけど、本当に周りになんにも無いから、毎日のように部屋の窓を開けてずっと音楽を聴いてて。死ぬほど好きだったバンドが一回だけ、車で二時間くらいのところにあるライブハウスにライブをしに来たの。 (中略)  客電が落ちて、真っ暗な会場に歓声が響いたときに、なんか急に恥ずかしくなって、逃げ出したくなったの。こんな田舎町に居て、お前らはなにを叫んでるんだよって、なにも無いのに叫んだりするなよって。 (中略)  ステージに出てきたばかりの大好きなバンドメンバーに謝りたくなった。こいつら全員頭がおかしいんですって。  (中略)  それから、一曲目が始まって、ボーカルが歌いはじめて驚いたの。本当に信じられないくらいに全然声が出てなくて。最初は驚いたんだけど、その歌を聴いていたら、嬉しくてたまらなくなってきて、気がついたら自分が叫んでいたの。なんか認めてもらえた気がして。CDで、くり返しくり返し馬鹿みたいに聴き続けてた曲の高いところで、CDとは程遠いかすれた声で情けなく裏返るその声を聴いてたら、窓からいつも見てたなにも無い絶望的な風景を認めてもらえたような気がして嬉しくて。 (略)」

次は、バンドの終わりを感じて祐介が、ライブハウスのトイレで今の自分の変化に気づく場面。

 壁に貼ってあるポスターやフライヤーを眺めながら、用も無いのに用を足す。そのなかで、「本気でプロを目指せる仲間を募集」と書かれた手書きの汚い文字が目についた。太いマジックの線はところどころにじんで、紙焼けして茶色くなっている。他人の夢はこんなにもうす汚く見える。 確かに本気でそう思っていた。本気でプロを目指していた。それでも、長時間蛍光灯の不健康な光に照らされて茶色くなっていく紙のように、すこしずつ自分の気持の変化に気がついていった。いつの間にか、客の居ないガラガラのライブハウスが音楽そのものになっていた。真っ暗なフロアで、客の代わりに現実がうごめいていた。

どちらも一流の、すごく鋭い観察だと思う。細かな部分での言い回しもおもしろい。

少しでも引っかかるものがあれば、是非手にとって読んで欲しい。通しで読むと、また自分にあうおもしろい表現に出会えるはず。

尾崎世界観、すごい

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僕は『祐介』を読んで、素直に「尾崎世界観ほんとすげーなー」と思ったので、改めてどうすごいか強調しておきたい。

1. 小説を書くということ

色々とすごい点はあるのだけど、まずシンプルに、小説作品をきっちり完結した一つの物語として世に送り出せたということ。

70,000字も、一貫した文章を書くのってめちゃくちゃ大変です。

大学の卒論とかでも2万字程度が一般的。卒論を3個書く。しかも一貫性がある内容で。そう聞くと、どれぐらい大変なことかイメージしやすいと思う。

いま、仕事の合間に卒論、書けますか?

本業の音楽の間でやるには、あまりに大変な仕事だ。でも、こうして世の中に作品として送り出せたことは、手放しですごいことだと言えると思う。

2. 真正面から文学を書いたこと

普通に考えて、尾崎世界観クラスの知名度と人気があれば、下積み時代の苦労話や成功体験をブログみたいに気楽な文章で書けば、それだけで商業的にある程度成功するだろう。

でも、そうはせず、文学という全く他ジャンルの土俵に立って勝負をした。

リスクの大きな選択だ。

尾崎世界観クラスの知名度があるなかで、他の芸術分野に足を踏み入れるということは、すごく大きなリスクでもある。小説が評価されないと、「結局、『文学的な歌詞』とか言われてても、本物の文学の場では子供の遊びなんだ」というように、本業の音楽の現場でも評価を落とすことに繋がりかねない。

クリープハイプは、魅力的な世界観の歌詞が大きな武器となっているバンドだ。その武器に、ケチがついてしまうリスクの大きな選択だ。

僕は、この挑戦を途方もなくすごいことだと思う。

3. 評価されたこと

この小説『祐介』を、アメトーーク!で又吉が絶賛していた。読んだ今なら分かるが、あれは決してリップサービスではなかった。

読書家として知られる又吉だが、実際のところ、本当に文学ガチ勢だ。又吉が選ぶおすすめ小説のラインナップとかは、お堅い作家から新進気鋭の現代文学の若手まで幅広く、本当におもしろい小説をレコメンドしてくれる。

その又吉が、手放しで『祐介』を褒めていた。これは、素直にすごいことだと思う。

昔から、尾崎世界観は小説を書かせたらおもしろそうだ、というぼんやりした期待はあったと思う。おもしろい小説を書きそうな人は、やっぱりおもしろい小説を書くんだ。

おわりに

技術的な巧拙はともかく、この『祐介』、芥川賞ノミネートぐらいはあっていいと思った。というか文藝春秋はするつもりじゃないかな。中編小説だし、デビュー作だし、芥川賞の要件は満たしている。

この小説が商業的に成功するなら、芥川賞を受賞することも全くもって不思議なことではないと思う。

もちろん又吉の『火花』の成功があったという下地はあるが、小説以外のカルチャー出身者の私小説(*)はこんなにもおもしろいということを証明した。

出版業界にとっては、ちょっとしたブレイクスルーですよ。是非とも、文壇として適切な評価をフィードバックしてあげて欲しいと思った。

今回、『祐介』を読んで、邦楽ロックファンとして、邦楽ロックの最前線を走るアーティストは他のカルチャーにおいても活躍しうるんだ、ということがはっきり分かって僕は本当に嬉しい。

小説執筆にあたって、音楽とは異なる苦労や経験がたくさんあっただろうと思う。それらが今後、クリープハイプの音楽にどう反映されるかが楽しみでならない。

(*)私小説…作家の個人的な経験や心情を書いた小説

10-FEETのライブを生で観るべき4つの理由

みんな大好き10-FEET。

フェスでは大体一番でかいステージのトップバッターとかトリ。あらゆるフェス主催者が絶大な信頼を寄せている、最強のライブバンド。

テンフィは生に限る。

ビールみたいな言い方になっちゃったが、いつ見ても100%楽しくてすごい。

「10-FEETのライブの注意事項」とか「10-FEETのライブ定番曲」とかを紹介する記事は結構あるんだけど、「なんで10-FEETのライブを観るべきなのか」、って記事は見当たらなかったので僕が書くことにする。

「行く予定のフェスで10-FEETがトリだけど、あんまり知らないからどうしようかな」そんな風に悩んでる人、今すぐテンフィのタイムテーブルに○付けて予習しよう。

今日は、10-FEETを絶対に生で観るべき理由を紹介していきたい。

1. 超楽しい

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一番目にして最大の理由がこれ。10-FEETのライブ、超楽しい。

「楽しい」ってことにかけては他の邦楽ロックアーティストを80歩ぐらい引き離してぶっちぎりでトップを走ってる。

とにかく「普段10-FEETを聴いたこと無いけど、今度行くつもりのフェスに10-FEETが出る」って人、3曲ぐらい予習して是非飛び込んで欲しい。絶対に後悔しない。

媚びずに自分たちのやりたい曲をやる硬派なイメージのいわゆるロックバンド像からかけ離れて、彼らはとにかく客が喜ぶことに全力投球してくれる。

ちなみに『cherry blossom』では、みんなタオル投げるせいでテンフィの出番の後、落とし物センターにタオルが溢れかえる。

2. 色々アツい

物理的にアツい

テンフィのライブ、前方はきつい日の満員電車の倍ぐらいきつい。寿司詰めというかもはや寿司。ちょっと意味わかんないな。

要はめちゃくちゃパンッパンに人が押し寄せてくる。アツい。物理的にアツい。暑いし厚いし熱い。

でも恐れるなかれ。

人でぱんぱんでライブ中の当たりは激しいけれど、転んだりしたら誰かれ構わず救い上げてくれる。ファンもアツい。

コンディションによっては前で見ると危ない場合があるのも事実なので、自分の楽しみ方にあったスタンスで楽しんで欲しい。10-FEETならどこから見ても楽しいので安心していい。

曲がアツい

テンフィのライブ、もう大体絶対やる曲がある。で、その曲がことごとくアツい。

もう皆やるってわかってるけど、それでも始まったら体中が熱くなって叫びたくなる曲達だ。

そんな曲から一部を紹介する。

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『VIBES BY VIBES』

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『goes on』

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『1sec.』

ここらへんは一通り大体やるので覚えておけば間違いなく初見でも楽しめる。あと下で紹介する『RIVER』は絶対にやるので覚えておいて欲しい。

とにかくもう全部アツい

会場もアツければ曲もアツいし、TAKUMAのMCもまたアツい。よく「隣の人とハイタッチ!」とか言う。陰キャラコミュ障にはつらい。でも楽しい。コミュ障でもハイタッチできる。なんかそんなアツさが会場中に満ちている。エモい。

とにかく10-FEETのライブは、あらゆる体験全部がアツい。

いま日本で一番アツい音楽体験を提供してくれるバンドだと言って過言ではない。

3. 最強のライブバンド

10-FEET、2012年9月19日に発売したアルバム『thread』から2016年7月20日発売シングル『アンテナラスト』までの約4年間、オリジナル音源を発売していない。 (カバーアルバムは出している)

Wikipediaによると、オリジナル音源の出ていない2013〜2015の彼らの出演イベントは以下の通り。

(ちなみにWikipedia、2015年のRISING SUNとROCK IN JAPANとかの夏イベントがごっそり抜けてる)

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出過ぎワロタ。

どんだけ働くんだよ。コンビニバイトかよ。

その間オリジナル音源まったく出してないのに、呼ばれ続けている。年々呼ばれる数も減るどころか増えている。

それに普通、何年も音源出してなかったら、フェスでの動員も少しは落ちてステージのランクが下がったりする。

しかし、彼らがオリジナル音源を出さなくなって3年目、2015年はRISING SUN ROCK FESTIVAL、ROCK IN JAPAN、ミリオンロック、そうそうたるフェスでメインステージの大トリを務めている。

ひとえに、彼らのライブのすごさを証明することだと思う。

ちなみにこちらが2016年発売された待望のニューシングル『アンテナラスト』

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10-FEET ― アンテナラスト ~京都大作戦2016 LIVE VERSION~

名曲だ。この動画2分半ぐらい歌わないからきをつけろ。

4. 毎回ドラマが生まれる

10-FEETのライブでは、いつも必ずドラマが生まれる。

たとえば、毎回やる『RIVER』は、大体Cメロを観客に歌わせるのだけど、それが本当に鳥肌立つぐらいすごい。毎回同じ曲をやるけど、毎回違ったドラマになる。

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『RIVER』

毎回確実にやるRIVER。 大サビ前のCメロは大体みんなに歌わせるけど、その時の大合唱は本当にいつ聴いてもアツくて震える。

他にも京都大作戦で10-FEETがHi-STANDARDの『STAY GOLD』をやったときに、ハイスタの横山健と難波章浩が途中から乱入して演奏代わったり。あるいはテンフィがサルのコスプレして歌ってる所にマンウィズ乱入して動物園になったり。10-FEETのライブでは、いつもなんらかの形でドラマが生まれる。

10-FEETのライブを見れば、どんな形であれ、あなたの心に刺さる思い出になることは間違いない。

おわりに

10-FEET、とにかくフェス行ったらだいたい居るし、彼ら自身でフェスを主催してもいる。『京都大作戦』が彼ら主催のフェスだ。

そして『京都大作戦』では、チケット転売対策をいち早く全面的に導入して、音楽イベントの生き残りを賭けた問題に真正面から取り組んでいる。ライブバンドとしてぶれない信念をもって活動していて、そういったステージ外の行動もかっこいい。

そういった背景も踏まえて、繰り返しになるけど10-FEETのライブは絶対に生で観て欲しい。彼らのすごさを目の当たりにして欲しい。

絶対に後悔しないはずだ。

僕が行くフェスでは大体確実に10-FEETがベストアクト1〜3位に入ってくる。何度見てもぶっちぎりですごい。

きっとあなたにとっても、10-FEETを生で観ることは、なんらかの形でそのイベントに大きな思い出を残してくれるはずだ。

ヤバイTシャツ屋さん聴いたことないのはもう流石にヤバイ

ヤバイTシャツ屋さんが、2017年邦楽ロックシーンの主役になることはもう流石にはっきりしてきたと思います。

今ヤバT聴いてないの、もう流石にヤバイ。聴こう。邦楽ロックファン、フェスの民の必修単位です。

これまでネットの口コミ中心にじわじわ版図を広げてきたヤバT。今日は、結局彼らの何がヤバイのかを紹介しようと思います。

そもそもヤバTのこと

ヤバイTシャツ屋さんを知らない人に超ざっくり紹介すると、大阪のバンド。以上です。

良くも悪くも大阪のバンドなんです。詳しくは、おしゃれなブラクラみたいな公式サイトを見て欲しい。

公式サイト

実際、どんなバンドかは音源聴いたら一発で分かるとおもうので、このまま読み進めてMVを見てもらえたら。

ふざけたバンド名

最近よくある意味わからん系のふざけたバンド名。ヤバイTシャツ屋さん(超キーボード変換しづらい)。バンド名で嫌厭して聴いてない人も結構いるんじゃないかと思ってる。

そもそもヤバイTシャツ屋さんってなんですか?と。

どんなシャツ売ってるんですか? 僕の知ってるヤバイTシャツ屋はミッキーのTシャツとボブ・マーリーのTシャツが隣り合わせで売ってる。どっちも無許可でイリーガルな感じのプリント。間違ってもBEAMSじゃ売ってない。言論統制スレスレのセレクト。

BEAMSに無さそうなふざけた音楽

ヤバイTシャツ屋さんの音楽、実際↑で書いたTシャツ屋と大差ない感じだと思うんです。

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【全曲トレーラー】ヤバイTシャツ屋さん 1st FULL ALBUM「We love Tank-top」

新アルバム1曲目からミュージカルで「We love Tank-top」

タンクトップ。

で、アレンジがもろディズニー。アレンジャーにディズニーのCD渡して「こんな感じで」ってアレンジしてもらったらしいです。

2曲目が「Tank-top of the world」。バンド名放ったらかしでずっとタンクトップの話してる。ちなみに曲名に「Tシャツ」が入る曲は1曲もない。

なんかもう色々意味わかんないけど、間違ってもBEAMSに無さそうなのが分かってもらえたとおもう。BEAMSはこんなふざけた音楽置かない。

かといって、彼らの音楽、ユニクロとかしまむらでもない。やっぱり「ヤバイTシャツ屋さん」ぐらいしか置いてくれないんだと思います。

言ったそばから台無しの悪ふざけ

『流行りのバンドのボーカルみんな声高い』という曲があります。

流行りのバンドのボーカルの男みんな声高い 歌詞

基本的に売れてるバンドを僻んでる歌です。イケてるダンスミュージック作りたいって言ってる。

で、同じアルバムにダンスビートでめちゃくちゃキャッチーな曲があるんですが、それのタイトルが『週10ですき家』

もう台無し。

4つ打ちスチャスチャでキャッチーなメロディでめちゃくちゃかっこいいのに、言ってることが「すき家君の事が好きや」

イケてるダンスミュージック、平気でドブに捨ててるんです。

めちゃくちゃキャッチーなメロディですよ。普通のバンドマンが一生懸命キラーチューンに仕上げようと頭ひねるところを「すき家君の事が好きや」

イケてるダンスミュージックはやっぱりいらなかったらしい。ふざけた才能ですよ本当。

メジャーデビューで悪ふざけ

彼らの代表曲の一つ、『あつまれ!パーティーピーポー』のMVを見てください。2本立て続けに観ること推奨。

まずはインディーズ時代版。

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あつまれ!パーティーピーポー - ヤバイTシャツ屋さん [インディーズ版]

で、メジャーに行って改めて撮ったMVがこちら。

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ヤバイTシャツ屋さん - 「あつまれ!パーティーピーポー」Music Video[メジャー版]

ぶれないふざけっぷり。

人生の一切を誠実さに捧げてきた公務員が見たら「あ、うん、そういうのいい…」ってなりそうなふざけっぷり。

金があってもふざけ方は一貫しているわけで。

それで、この曲の元ネタ(というか茶化し元)がこれ。LMFAOの『shots』という曲です。

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LMFAO - Shots ft. Lil Jon

ちなみにこの曲、ちゃんとLMFAOの許可とったらしいです。本気。使える金が増えても一貫してふざけている。

そろそろ聴いてないのヤバイってことが分かってきたと思います。

本気の悪ふざけ

ここまで見てきたように、本気で悪ふざけし続けてる彼ら。彼らの尖ったヤバイ武器へと昇華した悪ふざけ。

悪ふざけも一貫して本気でやってると、ヤバイ売りになることをはっきり証明したヤバT。

ふざけるって金になるんだなァ!

とはいえ、別に彼らは何も考えずに悪ふざけしているわけではないわけで。ふざけてるようで、彼ら自身と邦楽ロックシーンをめちゃくちゃ批評していると思うんです。

『あつまれ!パーティーピーポー』のMVがいい例だ。ふつう、メジャーデビューして使える金が増えたらもっと凝ったMVを撮る。一生残る自分たちの最初のメジャーデビューMVですよ。

そこでふざけられるヤバT。めちゃくちゃ狡猾じゃないですか?

邦楽ロックシーンが自分たちに何を期待していて、どういうポストに自分たちが就こうとしているかはっきり分かった振る舞いです。

これからも本気でふざけて、僕たちを踊らせ続けて欲しい。

おわりに

さすがに彼らのヤバさ、分かってもらえたんじゃないかと思います。

今ヤバTを聴いてないのはヤバイ。2017年、邦楽ロックシーンの中心にいるのは彼らのはず。ヤバイTシャツ屋さんを聴いてないヤバイ奴のままでいちゃいけない。

2017/11彼らのファーストフルアルバムが出ました。これがめちゃくちゃ良い。彼らの魅力が十二分に伝わるアルバムになってると思う。これまで聴いたことなかった人は是非聴いて欲しい。