もうタイトルどおりです。
WANIMAの曲、0か100かみたいなところがある。
人間の心の一番きれいな部分を歌ったような、メロディも言葉もめちゃくちゃクリーンな楽曲達。例えば、『1106』や『THANX』、『TRACE』、『ともに』らへんがそれにあたる。口ずさんでると、それだけで少しいい人間になれるような気がする"きれい"サイドの曲達。いわばWANIMAの「白い」部分を担う楽曲。
一方、WANIMAの「黒」担当。人間の本音オブ本音みたいな曲たち。もう下半身直撃。たとえば『BIG UP』とか『いいから』とかがそれにあたる。黒っていうか、なんか肉感ある赤黒さ。
WANIMAの曲、なんかこういう0か100かみたいな風潮がある。
なんでWANIMA、人間の心の一番きれいな部分みたいな曲と下半身一直線の曲しかないんだ。
"きれい"サイド
WANIMA -TRACE (OFFICIAL VIDEO)
このMVどこで歌ってんだこれ。電源を引け。
「人は言う 目を覚ませ」そりゃ言うだろこんなとこで歌ってたら。こち亀の日暮でも言うよ。目を覚ませ。
しかしまあ曲のかっこいいこと。遊びの多い緩急に、一本筋のピシッと通ったKENTAのハイトーンボイスがめちゃくちゃ映える。メロコアの単調なはずの音作りの制約の中で、よくここまで飽きない展開の曲生み出せるなと思う。
本当に、WANIMAはメロコアを再発明してると思う。スカダンス一辺倒のメロコア部族の民たちに、リズムを取って歌を歌うという音楽本来の原始的な楽しみを知らしめたよ本当。
それで、歌詞がこんな具合だ。
頭に焼きそばを乗っけた、いかがわしいアジア雑貨屋の店長みたいな見た目からは想像できないぐらい繊細な言葉選び。ただ母音だけあわせて韻を踏むんじゃなくて、ちゃんと文脈を抑えて言葉を選んでる。
こちらは代表曲の『THANX』
過剰にキラキラした言葉が並んでいて、少し心の荒んだインターネットに住まう根暗たちには着色料が強すぎる内容。
でも、ライブみたいな非日常空間では、これぐらい過剰に装飾されたストレートな言葉のほうが口に出して歌ったときに気持ちよかったりする。
聞けば一発で覚えられるキャッチーなメロディとリズムに、大声で歌ったら絶対気持ちいい言葉達。ライブでの幸福感を最大限高めるように設計されたWANIMAの曲。
間違いなく、"きれい"サイドの楽曲は、WANIMAの看板。
下半身サイド
WANIMA -BIG UP(OFFICIAL VIDEO)
WANIMAの下半身楽曲のPVって意外と少ない。多分この『BIG UP』ぐらい。WANIMAのメディア戦略担当がよっぽどずる賢いんだと思う。この曲は夏の鉄板曲。夏以外も確実にやるけども。
曲の中身はメロディも詞も実に下半身に正直で、非常に好感のもてる作りとなっております。
バンドでメシを食える奴らは全面的に女の子の性欲を煽ることを義務付けて欲しい。売れてるバンドってだけで普通の成人男性の2万倍ぐらい恵まれた股間事情を過ごしてるんだから。その点WANIMAは優秀。男女問わず、「あ、これ過ち犯していいやつじゃん」というムード丸出しできてくれる。
最高。
正直は美徳ですよ。どいつもこいつも、生ぬるい愛情表現を無理やりあの手この手でオブラートに包んで歌うけど、もうこれぐらいちんちん丸出しな方がいっそ清々しいわけよ。最初から全裸で歩いてるおっさんと、マント着てて女学生の前でだけ丸裸になるおっさん、どっちも同じ変質者だけど最初から全裸の方がなんか気持ちいい変態だったりするじゃん。潔すぎて逆に「なにか事情があって裸なのかな…?」みたいに、嫌味のない捉え方ができるというか。WANIMAはもう最初から全裸。オープンな変質者よ。
他にも『いいから』とか『1CHANCE』とか、出すCD全部に青少年の股間応援ソングが紛れ込んでくる。WANIMAは日本の股間代表バンドよ。これだけ潔く丸出しなら、おれたちの股間の気持ちを歌うことにも異論はないよ。
卓越した「歌」づくりのセンス
“きれい"サイドの曲も、下半身サイドの曲もどちらも共通しているのは、WANIMAの卓越した「歌づくり」のセンスに支えられているということ。
誰でも、1回聴いたら絶対に忘れないキャッチーど真ん中の、めちゃくちゃ華のあるメロディ。そこに、口ずさんで絶対に気持ちいい言葉選び。オノマトペ一つとっても、WANIMAの言葉選びは詞としておもしろい。ライブで聴かせて、歌わせて気持ち良いWANIMAの歌。
歌は本来、誰かが歌うのをただ聴くものじゃなくて、誰かれ構わず参加して歌えるのが原始的な楽しみ方だ。WANIMAは、「歌」の持つその原始的な魅力を、最大限引き出す曲作りができる。
そして、その気持ちよさを最大限高めるプレイング技術もある。MCの茶目っ気もある。WANIMAは、「みんなで歌う楽しいライブ」をいま一番楽しくやれる若手バンドでもある。
おわりに
WANIMA、すごく良いバンドだと思う。数年に1組の、規格外のバンド。
広がるスピードで言えば、ELLEGARDENが出てきたときぐらいの急速な広まり方をしてる印象だし、それに対して違和感もない。シーンの雰囲気を変えちゃうぐらい、WANIMAのブレイクは邦楽ロックにとって重要なものになってる。
もちろん、ダンスロックが一通り行き渡ってそろそろ4つ打ちばっかりもどうなの?っていう疑問が芽生え始めてたところにカウンターカルチャーとして刺さった側面はあると思う。でも、WANIMAが一介の「ちょっと売れたバンド」にとどまらず、ここまで広く受け入れられたのは全面的に本人たちの力に拠ってるはずだ。
もう登れる山は一通り登ってしまったWANIMA。次は、自分たちが邦楽ロックに新しい景色を作り出す順番が来たんじゃないかと思う。WANIMAは、またもう一つ大きな嵐を見せてくれるんじゃないかと、僕は思う。